【怖】泣き女



実家の扉をあけたらすぐ目の前が神社の境内がある、変な場所に住んでいた人の話


毎日鳥居をくぐって家に帰っていた


そりゃあ、いろんな事があったそうな


その中の一つが、泣き女


深夜1時頃、毎晩というわけではないが週に一度は泣き女の泣き声が聞こえた


彼女の部屋は境内に面した所にあったので、窓越しに嫌でもそいつの声が聞こえてくる


おぉおぉ…ぅおおおぉぉぅ…


すっかり寝静まった住宅街に泣き女の獣ような声はよく響いた


初めて聞いた時は得体の知れない鳴き声に布団の中で震えていたが、そのうちそれが人間の声だとわかった


きっかけは近隣住民の通報


警察が駆けつける頃には泣き女は姿をくらまし、いつも彼女が事情を説明していた


何度かそんな事があり、挙げ句の果てに彼女が泣き女じゃないのかと警官に疑われた時には心底頭にきた


親もさすがにカチンときたらしく、警官に食ってかかっていた


それからまもなく、神社の前がパトカーの深夜パトロールのルートに加わったことで泣き女もそう頻繁には現れなくなった


正体がわかれば変なもので、もう怖いとは思わなくなり、時折現れても無視することができるようになっていった


ただ、いくら正体がわかったとはいえ相手は少なからず生きている人間で女だということぐらいで、気味が悪いということに変わりはない


ある日、たまたま用事で遅くなり家に帰ると、運悪く泣き女に出くわしてしまった


ただその時は一瞬びっくりはしたが、まさか泣き女だとは思わなかった


夜に神社にお参りにくる人はたまにあったし、まだ0時を回って間もなかったからだ


神社の境内には砂利が敷いてある


家の玄関に向かい、鍵を開けて中に入るだけだ


ジャッ、ジャッ、ジャッ…


走るのも変なので、あくまでいつも通りに玄関に向かう


バッグから鍵を取り出そうとした時…


ジャッ…ジャッ…ジャッ…


人影が動いた


ただそれだけのことなのだが、焦ってしまい鍵がなかなか見つからない


「おぉおぉぅ…ぅおおぉぉ…」


泣き女だ!!まずい!!


ジャッ…ジャッ…ジャッ…


鳴きながらこっちに向かって歩いてくる


必死に玄関のドアを叩き、インターホンを押しまくった


「お母さん!あけて!お母さん!」


必死に叫んだ


怖くて後ろは振り返れない


生きてる人だとわかってはいても相手は普通じゃない


もしかして刃物でも持っていて後ろから刺されるかもしれない


だけど、どうしようもなく怖くて振り返れなかった


後になって考えたらわずか1分ほどの出来事だったかもしれないが、果てしなく永く感じた


玄関の明りがついた


「お母さん開けて!はやく!」


「いい加減にしなさい!何時だと思ってるの!遅くなる時はちゃんと連絡…」


「そういうの後で聞くから早くあけて!!」


夜中に叩き起こされて、さらに近所迷惑も重ねて母の怒りは絶頂だったに違いないが、今は扉越しの押し問答をやってる余裕なんてない


「あいつが来てるの!」


母は事情を察してくれたらしく、さっと鍵を開けてくれた


玄関に飛び込み、すぐに後ろを振り返った


泣き女はただ砂利にうずくまって、ひたすら泣いていた


あいつが近づいてきていると思ったのは私の勝手な勘違いだった


「…おぉおぉぉ…うぉぉおぉぉぉ……」



・・・その姿は、なんとも憐れで、とても哀しそうだった



私は、その異様な光景にただただ呆然と立ち尽くしていた



家に入ることも、怒りの絶頂にいた母が目の前にいたこともすっかり忘れて

 
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